自作小説『透視』とその解説

※アフィリエイト広告を利用しています
※アフィリエイト広告を利用しています

今回は自分で書いた小説『透視』を載せます。あ、大丈夫です。みなさんは小説と聞いたら単行本一冊の文字数をイメージされるかと思いますが、掌編小説なのでサクッと読めます。その解説が下に続きます。皆さんご自身の自分の解釈と照らし合わせば、新しい発見があるかもしれません。

今日はテストがある。だからいつもより早く起きた。持っていくものも揃えたし、後は外に出るだけだ。俺は居間から内玄関に向かうと、家の外で大きな音がした。それで俺は何が起きなのかと思い、内玄関のドアを見た。するとドアの中心部だけ色が薄くなった。俺は変に感じ、それを見続けた。すると薄くなる部分が広がり、さらにその薄さも増した。そして遂にドア全体が消えた。ドアで遮断されていた筈の向こう側がハッキリ見える。家の外で工事が行われていた。俺は納得したと同時に、或る問題に気付いた。それは、俺の姿が外から丸見えだということだ。何とかせねば。そういえば今、庭に大きな板が置かれてある。とりあえずそれをドアの代わりに置こう。そう思って、外に出ようとした。しかしそれは出来なかった。何かに跳ね返され、俺は床に倒れた。ドアが無くなり何も無くなった筈なのに、どうしてだ?俺は立ち上がり、ドアの方を見た。そこにはちゃんとドアがあった。先ほど見たのは何だったのか?不思議に思いながらドアを見た。すると先ほどと同じようにドアの色が薄くなっていき、ドアが消えた。家の前の歩道に通行人が一人差し掛かってきた。そいつはこちらを見る……ことなく去っていった。なぜだ?視界の端にドアの無い家があったら、そちらに顔を向けるだろ。それともあれか?あいつは逆に見ないようにしたのか?いやでも、そんな素振りもなかったな。普通の家だと認識したのか?普通の家か。壁があってドアがあって……ん、どういうことだ?ドアがあるけど、俺は家の外を見ることが出来た。もしかしたら……これ透視じゃねえか?さっき俺が外に出ようとしたときも、俺は自分が透かしたドアに跳ね返されたということか。漫画やアニメでは聞いたことがあるが、まさかこんなことがあるとは。俺はドアから視線を外し、内玄関に置いてある物を片っ端から見た。そうしてからドアを見た。やはりドアが見えた。どうやらこれは、向こうを見たいと思いながら見ると起こるらしい。俺は家を出て、学校に向かった。道中、このことで頭がいっぱいになった。これを使えば、どんなことが出来るか?正月の福袋だって、中身を透視して選べる。まあ、俺は福袋を買わないが。地層でこれを使えば、化石がどこに埋まっているか分かる。新種を見つけたら、俺は有名人になるのかな。でもインタビューとか面倒くさそうだな。そんなことを考えているうちに、俺は学校に到着した。教室を覗くと、すでに一人いた。俺は席に着き、妄想を再開させた。沼でこれを使えば、沼の中にどんな生き物がいるのか分かる。生き物だけじゃない。何か遺跡も見つかるかもしれない。そしたらメディアに「世紀の大発見をした高校生」なんて言われて……ハハッ、やはり俺は有名人になる運命なのか。そんなことを考えているうちに、担任教師が入ってきた。俺が周りを見渡すと、もうクラスメイト全員が席についていた。俺の前の席のやつも座っていた。だが妄想に夢中で、そんなことにも気が付かなかった。まもなく担任教師が連絡事項を話した。一時間目は現代文だ。担任教師が出ていった教室に、現代文の教師が入ってきた。そしてテスト用紙が配られた。まもなくチャイムが鳴り、テストが始まった。俺はテスト用紙に名前を書き、問題を解いていった。半分くらい解き終えたところで、閃いた。これを使って前の席のやつを透かせば、カンニングが出来る。俺は前の方をじっと見た。するとその通りになり、そのテスト用紙も見えた。そして書かれている字も見えた。しかし読めなかった。

この作品のテーマは「人の視力」です。人の目の解像度には限界があります。それを読者に実感させたくて、この作品を書きました。

それを万能感のある透視を持ったら、という話で表現しました。たとえ透視が出来ても、人の視力は変わりません。例えば遠くに書かれた文字は読めません。しかし主人公は結末の直前まで、透視で何でもできると思っていました。しかしいざ実行してみると、人の視力には限界があることが浮き彫りとなりました。

ここからは、つじつま合わせの話です。

透視は普通、ありえないものです。だから主人公は最初ドアが透けた時、それをドアが消えたのだと解釈しました。しかし主人公は後の方でそれを意図的に使いカンニングします。だからそれまでに、この超常現象が透視だと分からせる必要がありました。そこで外に出ようとして何かにぶつかる、通行人に気づかれない、この二つの出来事を置きました。主人公はそれを受けて、この超常現象が透視だと気づきます。

遠くのものは見えるけど詳細は分からないというのは、割と早い段階で主人公が気づいちゃうと私は思いました。なので今回、物語全体の時間を短くしました。

そんな短い時間の間で、主人公に勘違いを溜めさせる必要がありました。だから妄想させました。主人公の妄想をイキイキとさせるために、この作品を一人称小説にしました。

今回は自作小説とその解説を載せました。この解説はあくまで、作者の解釈になります。みなさんは存分に深読みしちゃってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました