今回は、『物語論 基礎と応用』を紹介します。はじめに断っておきたいことがあります。あくまで本(気に入ったもの)の宣伝なので、超具体的な内容は書けません。ですが、皆さんにこの本の魅力が少しでも伝わるよう書きますので、どうぞお付き合いください。
本書は第一部「理論編」と第二部「分析編」から成っています。理論から学ぶのはなんか面倒臭いな、と思った方もいるでしょう。でも安心してください!本書のイントロに、分析編から読んでも理解できるようになっていると書かれています。実際はどうかと言うと、応用編を読んでみると基礎編で定義された言葉がひょいっと出てきたりします。そこで一瞬「ん?」となるんですが、「まあいっか」と済ませられるレベルです(そんなことを言う私ですが、順に読みました)。
イントロで、物語論とはどんな存在なのかが書かれていました。ただ作品を鑑賞するのとどう違うのかの喩えが絶妙で、説得力がありました。
理論編ではまず、三つの理論が解説されていました。理論だけでなく、それを提唱した人の考え方まで紹介されていて、理論に親しみを覚えました。その中の一人、ロラン・バルトの著作タイトルに関しての補足が面白かったです。タイトルを見てポッと浮かんだささいな疑問に答えてくれた気がして、そこらへんが丁寧だなぁと感じました。
次に日本語で言うところの「物語論」、物語論における「物語」などがどう翻訳されてきたかという話がありました。私は「物語についての学問なんだから、物語に論を付けて物語論ってことっしょ」ぐらいに考えていたんですが、本書を読んで「物語論」にはややこしい翻訳の歴史があったことを知りました。
第4章では、そもそも日本語にはどんな特徴があるのか、について触れられていました。私は学生時代、英語の勉強をする中で或る違和感を感じていました。それがこれを読んでスッキリ解決しました。どうも日本と、アメリカやヨーロッパとでは喋る時の視点の置き方が違うらしく、それが創作される物語にも影響するとのことです。その意識の違いが如実に出ている例が出されていました。私はそれを見て衝撃を受けました。私自身、高校の修学旅行でイギリスに行ったんですけど、そこで受けたカルチャーショック並みです。文化の違い、ってやつを久しぶりに体感しました。
第5章ではノンフィクションが物語にあたるのかについての著者の見解がありました。それまでの内容を踏まえてのものだったのですが、理解するのに少し時間が掛かりました。しかし興味深かったです。
理論編の最後に、もっと詳しく物語論を学べる本がずらりと紹介されていました。実は私、いつか小説を書きたいなーって願望がありまして、今後お世話になる気がします。
分析編では、海外の作品が盛りだくさん扱われていました。日本で日本語に囲まれて普通に暮らしていると出会えない作品が沢山ありました。しかも本著者の分析がまた興味をそそる。なんと言えばいいのでしょう?うーん、例えがずれている気がしますが、YouTubeのショート動画を見ているようで楽しかったです。一つ一つ分析されていくのですが、期待通り本格的でした。「この作品読んでさー、こー感じたんだー」というただの感想なんかではありませんでした。この作品はこうでこうなっていて、だからこんな効果が出ている、という感じでした。
私は興味のままに物語論を学べる本を調べ、これを見つけました。不安があったのですが、えいやっ!と買って読んでみました。読み終えた今、最初の本がこれで良かったと思っています。
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