自作小説『的中の喜び』とその解説

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今回は自分で書いた小説『的中の喜び』を載せます。あ、大丈夫です。みなさんは小説と聞いたら単行本一冊の文字数をイメージされるかと思いますが、掌編小説なのでサクッと読めます。その解説が下に続きます。皆さんご自身の自分の解釈と照らし合わせば、新しい発見があるかもしれません。

或る男がタイムマシンを開発していた。男は作業の合間、通信機器で親友と連絡を取っていた。会話の内容は、千年後の街並みはどんなものなのかというものだ。

遂にタイムマシンが完成した。それは潜水艦のような見た目をしていた。もしタイムマシンで行った先が海の中だったら、乗っている人が溺れ死んでしまう。男はそんなことを考え、その形にしたのだ。

男はこれで親友と未来旅行をするつもりだった。しかしもしタイムマシンが機能せず未来に行けなかったら、親友をがっかりさせてしまう。或いはもっと深刻な懸念がある。それは、タイムマシンで未来に行けたとしても元の世界に戻れなくなってしまうということだ。自分一人そうなっても諦めがつくが、親友まで巻き込むわけにはいかない。そう思った男は段階を踏みタイムマシンが機能して安全であることを確かめてから、友達を未来に連れていくことにした。

まず男は、タイムマシンのリモコンを手に取った。このリモコンで、男の目の前にあるタイムマシンの行き場所を設定できる。リモコンは板の形をしていた。そして表面にボタンがびっしり付いていた。男は誤ってボタンを押してしまわないよう、造形を工夫していた。男はリモコンの側面にあるボタンを押した。するとタイムマシンが一瞬にして消えた。少し時間を空けて、男は同じボタンを押した。するとやはり一瞬でタイムマシンが現れた。このタイムマシンは特殊な物質で出来ている。そしてリモコンの操作によって実体化させたり非実体化させたりできる。もし未来に行って、そこでタイムマシンを置いたままにするとする。すると、そこの住民たちにその存在を知られてしまう。それは都合が悪い。人でなくても動物にいじられてしまうかもしれない。男はそんなことを考えていた。だからタイムマシンにこの機能も持たせたのだ。タイムマシンが消えて再び現れたのを確認した男は胸をなでおろした。

いよいよ男は、千年後に行って帰って来れるかを確かめることにした。タイムマシンのエラーにより二度と帰ってこれなくなるかもしれない。そんな不安があった男は親友に「今から行ってくる」と連絡した。男はタイムマシンを眺めながら、返事を待った。しばらくして、親友から「了解」と返事が来た。それを確認した男は通信機器をポケットに入れた。そしてリモコンで周囲の環境を設定してタイムマシンに乗り込み、ボタンを一回押した。

すると一瞬でタイムマシンの周りの景色が変わった。そこは、静かなところだった。人工物に囲まれているが、人通りはなかった。男はタイムマシンから降りて、それをリモコンで消した。そして、そこに立ち並ぶ建物を見た。それは友達に熱弁していた予想通りのものだった。男の中に湧き上がるものがあった。それがどんどん強くなる。男はポケットに手を突っ込み通信機器を探った。しかし通信機器に手が触れ、その動きを止めた。そしてこう呟いた。

「あっそうか、ここ未来だった」

この作品のテーマは「通信」です。通信は、複数人が共通のプロトコルの上で行うものです。例えば今の時代、通信機器として最も一般的なのがスマホです。スマホは特定の電波を使って通信を行えます。もちろん時空を超えての通信は行えません。スマホに限らず通信機器は普通、時空を超えた通信を想定して作られません。

しかしこの作品の主人公は、数々の予想を当ててきた。そして千年後の街並みさえ当ててしまった。人は予想を的中させると、他者に報告したくなる生き物です。だから主人公も視野が狭くなって、親友に報告しようとしちゃったってわけです。

次に、つじつま合わせの話です。

この作品を思いついた時、ただタイムマシンで未来に行くのを思い描きました。しかし少しして、違和感を覚えました。未来に持っていったタイムマシンをそのままにしたら、どうなるか?未来にも人はいるはずで、その存在に気づかれるだろうと。そこで私は、タイムマシンを消したり現わしたり出来るようにしました。これはユニークにしたかったからではありません。この作品の後半で、「え、タイムマシンそこに置いたまま?」と思われるのを防ぐためです。

最後主人公は親友に報告しようとポケットに手を伸ばしました。ここでもし、通信機器を持ってきていなかったら、どうでしょう?主人公のミスが二つになります。一つは通信機器を忘れてきたこと。もう一つは、そもそも通信できないこと。この作品のテーマはあくまで、この後者です。だから通信機器を持ってくるのまで忘れたら、話がブレてしまうんです。そこで主人公が出掛ける前に、通信機器をポケットに入れるようにさせました。ちなみにその直前、親友と連絡を取っています。主人公が親友から「了解」という返事を受け取るというのが重要になります。主人公は「」と親友に連絡しました。まさか言いっぱなしにするつもりではないでしょう。この時点で主人公は時空を超えた通信は出来ないことは分かっていました。だから出掛ける前に返事を受け取ります。

今回は自作小説とその解説を載せました。この解説はあくまで、作者の解釈になります。みなさんは存分に深読みしちゃってください。

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